
明治末期。北アルプスの山々に囲まれた地で育った青年・瀧井孝作は、父親の事業が失敗し丁稚奉公に出され、窮屈な日々を過ごしていた。
幼い頃に兄や母も亡くし、寂しい孝作の拠り所は俳句に没頭することだった。
そんなある日、西洋料理屋の女中・玉と出会う。
美しい年上の女性の魅力に孝作は惹かれていく。
“堤長き 並松月夜 涼み行く”
孝作は、心からの玉への気持ちを句にしたためた。
玉との距離が縮まったと思っていた孝作だったが、次第に玉の言動や噂から不信が募っていた。
そんな折、玉と訪れた店で三味線芸者の鶴昇(加藤菊)と出会う。
鶴昇の端麗でどこか悲しげな姿に心奪われ、玉が孝作の元から去った後、鶴昇にのめり込み始める。
今までにない感情に翻弄される孝作は、次第に俳句からも遠ざかってしまう———
明治末期の高山。
瀧井孝作は家業が傾いたことから丁稚奉公に出され、窮屈な日々を過ごしていた。
幼い頃に兄と母を亡くし、寂しい孝作の心の拠り所は俳句を書くこと。 俳句仲間たちと句作に励んでいたある日、西洋料理店の女中・玉、三味線芸者の菊と出会う。
孝作は今までにない感情に突き動かされるのであった。
本作は飛騨高山に残る歴史ある古い街並みや雄大な自然を舞台に、 若かりし頃の瀧井孝作が経験する俳句仲間との青春、 西洋料理屋の玉と三味線芸者の菊との初めての恋を通して青年が人間として成長していく様を描く。
原作は志賀直哉に兄事し、芥川賞の選考委員を創設以来46年間務めた俳人・小説家である瀧井孝作が晩年に執筆した私小説『俳人仲間』の一編「初めての女」(日本文学大賞受賞作品)。
『俳人仲間』の中でも瀧井が生まれ育った高山で様々な人と出会い、青年の成長を描いた作品を映画化。
奇しくも、本作が公開される2024年は瀧井孝作が生誕してから130年の年である。
主人公・瀧井孝作を演じるのは井筒和幸監督や上田慎一郎監督の作品に出演するなど、今後の活躍が注目される髙橋雄祐。
まだ何者でもない青年が二人の女性と出会い、そして別れという現実に直面し、深い悲しみと葛藤に包まれる姿を繊細に演じた。
孝作が出会う西洋料理屋の玉役には、数多くの話題作に出演している芋生悠。芸者の菊役には、劇中で自身の特技である三味線を披露した三輪晴香。
寂しさの中に生きる二人の女性を、それぞれ演じた。
監督は元漁師という経歴を持ち、本作が劇場デビューとなる小平哲兵監督。
高山市の人々の協力の元、作品を完成させた。

